1000flavor’s diary

隙を作って自分語り

東映産の銀髪蛇野郎には気をつけろ

 

本記事は2017年放映「宇宙戦隊キュウレンジャー」の感想です

突然だがここ1カ月でキュウレンジャーを完走した。
スーパー戦隊シリーズゴーゴーファイブデカレンジャーあたりをリアルタイムで視聴してはいたのだが、申し訳ないことに気合を入れて観ていなかったので内容はほとんど覚えていない。

 

このタイミングであえてキュウレンジャーを選んだ理由は、「息子が生まれたのであらかじめ”特撮のコンテキスト”を予習」・・・というのは建前で、本当の理由はもちろん「彼」である。( オタクの近況2020 - 1000flavor’s diary 参照)

 
というわけで、3年越しにキュウレンジャー視聴と相成った。


先述したとおり特撮初心者であるため、以下その筋の方々には頓珍漢な内容も含まれているであろうことをあらかじめご留意願います。

 

 

 

人外ジャンルの英才教育

ロボット、機械生命体、アンドロイド、獣人、竜人
敵の話ではない。味方の話である。何なら戦士そのものの話である。


作品目からも推察できるように、本作品の初期人数は「9(キュウ)」人だ。
多い。ものすごく多い。戦隊は5人がスタンダードと記憶しているが、私が観ていないこの10年強で色々あったのだろう。


おまけにそのメンバーに上記が含まれている。つまり過半数が人外ということになる。
多い。ものすごく多い。ダイバーシティが叫ばれる現代社を反映したような人選だ。


最も印象的なこととして、彼らが種族の差異を理由に対立することが基本的にはないということが挙げられる。(例:「機械のくせに!」等)
作中で対立することは多々あれど、きっかけはあくまで個人間の意見の相違である。
外見が人型だろうが獣だろうが機械だろうが、立場は皆平等なのだ。何とチビッ子の情操教育に相応しいのだろう。


更に特筆すべきは、「ロボット」「機械生命体」「アンドロイド」間でさえ独自の個性を確立していることである。

ロボットは(本人の意思に反する時でも)製作者の統制下にありやすく、機械生命体は(「命がある」という上位互換ゆえに?)機械を自在に制御でき、アンドロイドは戦艦操作システム下にありながらも豊かな感情を持っている。

 

初めてビジュアルを見た時に彼らを「機械」「機械」「機械」と安易に判断した自分を恥じるばかりである。

 

 

 

緩急絶妙なストーリー

特撮の王道!

公式サイトによると、あらすじは以下のとおりである。

www.tv-asahi.co.jp

時は、はるかかなたの未来――宇宙は泣いていた。


宇宙を形成する88の星座系は、宇宙幕府ジャークマターに支配され希望は失われたかにみえた。しかし、宇宙にはある伝説がつたえられていた。
 宇宙が心なき者の手におち、人々が涙するとき、9人の究極の救世主があらわれ宇宙を救う!

 

 

まさに特撮の王道である。悪者に乗っ取られた世界を仲間と共に救うのだ。
展開も段々と仲間が揃い、覚醒し、やがて中ボスが現れる・・・、といい意味で「特撮といえばこんなストーリー」を踏襲している。

 

チビッ子向けに相応しく、勧善懲悪の傾向も強い。敵の行動は(一般的な倫理観において)同情の価値はなく、とことん「悪い」キャラクターとして描かれる。

 

 

戦隊が戦う目的も明確だ。

 

  • 「目標・大(=ラスボス打倒)」があり、
  • それを達成するための「目標・中(=中ボスの打倒)」があり、
  • 更にそのための「目標・小(=キーアイテムの獲得等)」が複数ある。


この明快な法則から大きくは逸脱しないため、非常にわかりやすい。
また、毎回冒頭で「この前は●●したぜ!これからは××するぜ!」とこれまでの流れを説明してくれるので忘れっぽい私には非常にありがたかった。

 

 


映画のような濃密感

本作品は原則一話毎に起承転結が存在する。
つまり、冒頭で提起された問題は大抵30分以内に解決する(オチがつく)。

もちろん展開上複数話に跨った方が盛り上がる場合は次回に続くのだが、強引な「引き」がないので毎話視聴後に爽快感がある。

あまりにも濃厚な30分のため、気分的には2時間くらいの映画を観た気持ちになれる。満足感がすごい。


余談だが、私の記憶だとスーパー戦隊シリーズには「放送開始後16分頃に敵味方が巨大化する」という法則が存在していた。
本作品ももれなくこの法則が適用されていたので安心した。スーパー戦隊たるものかくあるべし。
巨大ロボが巨大怪人を爆発四散させるとテンションが上がるのは、おそらく日本人のDNAに刻み付けられているのだろう。


それにしても毎話巨大化に尺を割きつつもきちんとオチまでついているのは本当にすごい。特撮とはそういうものなのかもしれないが、本当に感心する。

 

 


冒険譚ゆえの・・・

あらすじからわかるように本作品は「冒険譚」の要素もある。
「味方VS敵」が見どころとなる作品は、敵が味方の下に攻めてくる「侵略型」と既に敵に制圧された世界を取り戻す「奪還型」に大きく分類できるが、本作品は後者である。


このため、舞台が一箇所にとどまらず、敵の本陣を叩いていく過程で様々な惑星が登場しており、背景の描写が冗長にならず面白い。

 


また、敵地への潜入がバレないように変装することがままあるのも特徴的である。
なんなら変装目的以外でも普段着ではない恰好をすることもある。


要するにコスプレである。


私が記憶している限り、主に以下のようなものがある。(忘れているだけで恐らくもっとある)

  • メイド服と執事服
  • アイドル衣装
  • 寿司職人
  • 野球のユニフォーム
  • 勇者
  • 道化
  • 魔法使い(女)

  わざわざ(女)表記したということは、そういうことである。


クライマックスも程近いタイミングで寿司→RPG→野球が続いた時にはどうしようかと思いました。

 

 


熱熱狂熱熱狂狂熱熱狂狂狂

上記は「熱狂(ねっきょう)」を噛んだわけではない。


先述のとおり本作品は特撮の王道であり「熱い」ストーリーなのだが、稀に狂った回がある。否、「稀」ではなく結構ある。


狂っている例として、第14話「おどる!宇宙竜宮城!」を見てみよう。ちなみに私はこの話で本作品にハマった。


この回の大筋は、「敵地に囚われている民間人を解放する」「自分を不運だと思い込んでいるキャラが自ら運を掴み取る」である。子供向けに相応しく明るいテーマだ。


しかし、以下のように話のディテールがおかしいのである(良い意味で)。

  • 贅沢を奪う敵がいるが、「贅沢」のシチュエーションが異様に細かい。

  可愛い彼女と豪華なトッピングでクレープデート。
  回転寿司で金の皿を取る。(回らない寿司ですらないのが現代社会の不況を感じさせる。かなしい)

  • 自分だけ贅沢しようと敵が向かった豪遊先・宇宙竜宮城・・・に潜入するため、従業員と同じメイド服と執事服にコスプレする。

  その人選から「ただこの子達に可愛い恰好させたかったんだな~」という魂胆が見え見えである。いいぞ。

  • 敵を接待するために例の「おいしくな~れ」のおまじないをやる。

  なお全員男だったためかえって反感を買った

  • 敵の不機嫌が「女子がいないから」と突き止めたので、女子を連れてくるのではなく獣人に女装させる。

 ちなみに敵に一目惚れされたので「ごめんなさい」したあとに敵を爆破した。


色々ツッコミたくなる状況が続きながらも特撮の王道を外すことなく30分できっちり終わるため、もう私はこの回ですっかり本作品の虜になってしまった。とにかくテンポがいいんですよ・・・。


なお、何となくわかるかもしれないが「女の子が接待する」という描写は結局ほとんどない。平成末期のコンプライアンスを感じる。

 

 


根本に見え隠れする“陽キャVS陰キャ

本作品には多弁から無口まで個性豊かな戦士が登場するが、彼らは根本的にパリピである。文字通りのパーリーピーポーである。
 
その証拠に、彼らは実際しょっちゅうパーティーをしている。ある時は一仕事終えた打ち上げのために、ある時は仲間の旅立ちを祝うために、帰還したらまた祝うためにパーティーをする。
「宇宙を救う」というこれ以上ない程の大役を担ってはいるが、いつだってパーティーはするのである。いや、大役を担っていて日々疲れている上に、せっかくメンバーに宇宙有数の腕利きシェフがいるのだから、そりゃ隙を見て豪勢な料理は食べたいだろう。


バーベキューをした時には最悪なダブルパンチ(仲間が離反する&船内に敵の侵入を許す)を喰らったりしたが、その後もパーティーはしていた。すごい。
個人的にはものすごいタイミングでクリスマスパーティーをしていたので驚愕した。
  放送時期の都合というのはわかってます


また、彼らの多くは長らく被支配層であったゆえの重い過去を抱えているが、仲間と出会ったおかげで苦難を乗り越えてゆく。

要するに基本的に考え方が陽キャなのである。コスプレ好きだし。

 


一方、とある敵キャラは「宇宙は(弱者にとって)苦しみに溢れているから、消して苦しみから解放する」「諦めれば救われる、自分は(宇宙を消すことで)人々の救世主になる」と言っていた。彼は元々味方サイドのキャラだったのだが、強力すぎる仲間と無力な自分の差に絶望して悪に加担したのだ。

 


隠キャの発想である。

 


隠キャというのは、総じて原因を自分以外の誰かのせいにする。自分が変わるのではなく、他人に変化を押し付けようとする。

  ※持論です


だからこそ、キュウレンジャーに「諦めなければいつか絶対に願いは叶う、俺たちはそれを信じてここまで来た。俺たちはお前とは違う!」と糾弾され、倒された。


私は隠キャなのでどちらかと言うと敵キャラの意見に賛同したくなるのだが、だからといって子供向けである本作品の”正解”を隠キャ寄りにしてほしいかと問われれば、一母親としては「否」である。まだ可能性に満ちている幼少期からそんな後ろ向きな考えにはなってほしくないので・・・。


なので、本作品はこれが「正解」で良いのだろう。私は結局隠キャだけど。

 

 


自然と肩入れしたくなるキャラクター

ギャップが嫌いな人間はいない

本作品の登場人物は皆良い意味でギャップがある。


クールで一匹狼を気取っていたキャラが段々仲間に心を許していき、しまいには戦士のぬいぐるみを手縫いされたら「ついにデレたか」とニヤニヤしてしまうし、普段は明るくパリピっているキャラに、ずっと孤独を抱えていて心が空っぽだった過去があったということが明らかになったら「つらかったね・・・」と涙はらはらしてしまう。


話が進むにつれて色々なキャラの変化や過去が垣間見えてきて、性格に深みが出てくるのだ。架空の人物ではあるが、人となりに立体感が出てきてまるで本当に存在しているキャラクターのように感じられる。(作品自体はめっちゃSFだけど)


そんな彼らが敵に立ち向かう姿を見て、情が湧くなという方が無理な話である。もう「がんばえ〜〜キュウレンジャー〜〜〜〜!!!!!」と心のサイリウムが振り止まなくなるのである。

 

 


さすが子供向け、「学び」がある

ポジティブなキャラが決して「無謀」ではないのも良い。どんなに苦戦しても諦めずに敵に立ち向かうというのはただのポーズではなく、きちんとした作戦を踏まえ、ゼロではない勝算を見込んで敵に突っ込んでいるのである。
このスタンスは彼が仲間とのやり取りを通じて会得したものであり、子供向け作品としての「学び」を感じさせる。

 

 


キャラクター間の関係性の変化

1年間という尺が約束されているためか、この描写が非常に丁寧である。


最初は相反していたキャラ同士が「相棒」と呼び合う関係になるのだが、そこに至るまでの過程が良い意味でかなり長く、説得力がある。
反目していたキャラ達が突拍子もなく打ち解けていてもまったく共感できないが、本作品は時間をかけてその変化を描いているので初めて「相棒」呼びが成立した時の感動がひとしおである。

 

 


件の彼について

視聴のきっかけでもあったので元々注視はしていたのだが、そうでなくてもきっと私は彼に釘付けだっただろう。


1年間を経た彼の精神的成長は著しく、ひたすらに目が離せない。

  顔もいいし


「感情が欲しい」と彼の戦う目的が明確であることも功を奏していると思うが、その欲望がどのように収束していったのかという描写がこれまた丁寧なのだ。


また、全話見終わってから改めて初登場(第2話)を見返すと演技がまったく違う。徐々に感情を得ているのがわかるのだ。

  これは俳優の実力も大きそう


最終決戦を目前として死を覚悟する中、「感情を手に入れるために」仲間になった彼が最後に抱いた「感情」は何か、ずっと共にあった相棒が返した回答は何か。
あの会話、ものすごく良かったです。

 

 


まぁ・・・コンビで推すよね

彼は元々組んでいた相棒と共に戦士になるのだが、これがまた筆舌に尽くしがたい名コンビである。
クールで無口な人間と、ホットで饒舌な機械生命体。正反対ゆえの凸凹コンビ。最高。

 

人型に感情がなく、人外に感情があるという意外性もいい。ダイバーシティ


そして何より「こんなシチュエーションしてくれないかな〜〜〜いやぁちょっと望みすぎかなぁ〜〜〜〜〜」という視聴者(私)の考えを軽々と飛び越してゆくのが本当に凄い。大抵のオタクの妄想は網羅してそう。そしてリアルタイムのオタクの発狂っぷりも凄かっただろう。

 

 


迂闊にwikiを見なくて本当に良かった

私は何気なく本作品を視聴し始めたため、前知識が何もなかった。


つまり、第26話のタイトルを知らないまま当該回の次回予告を見たのである。

 

本当に、本当にネタバレを踏まないままアレをフルで観られて世界に感謝した。

 


闇堕ち編、起承転結が最高に最高だった。
私は何より「善が噛み合わないゆえに生じた悪」が大好物なので、「闇に降ってまで感情を得てほしくない」という仲間の叫びがかえって彼を闇へ駆り立てた描写が最高に滾った。


また、各所の台詞回しもツボだった。


具体的には以下の2つ。
「本当は俺のことバカにしてたんだろ!!」
→鬱屈したコンプレックスが丸出しなの、最高。私は人間の剥き出しの負の感情がSUKI


「何で途中で帰ってきたのか、わかる?待つの。・・・・・・蛇使いが蛇に使われる瞬間をね!」
→こういう言葉の綾ちゃん的な言い回しめちゃくちゃ好き。何気にこれ言ってる時ブルゾ●ちえみの真似してるのがツボ。


また、聖書等で「唆す」ことの多い「蛇」をモチーフに含むキャラが「唆されやすい」というのがとても良い。オタクはそういうのが大好物なのだ。 

 


ところでこの闇堕ち編を視聴している時はリビドーをどこにぶつけていいかわからなかったため、ひたすら夫に実況をしていた。

 

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▲宇宙一頭のわるい実況

 
ちなみに夫は早々にwikiを見ていたため、とっくに闇落ちのことは知っていたそうである。黙ってくれていて本当にありがとう、夫。

 

 

 

おまけ(記事タイトルの話とか)

彼のコンセプトがソキウスを彷彿とさせたので私はとても苦しかったです。
わからないそこのあなたは「マジンボーン」で検索だ!

 


あと、本記事を書いてる途中で特撮他作品について調べたら「ひょっとしてキュウレンジャーってわざわざ初見の感想書くほど異端でもないのか・・・?」と気付いてしまい、キャッキャはしゃいでるノリが若干恥ずかしくなってはきたんですが、せっかくそこそこ文字数打ってたので公開しました。これはハイテンションをバカにされないための保険です。

 

 


おしまい。